禁煙
はじめに
タバコが健康に悪いのはわかっているし、家族からも禁煙を勧められている、吸える場所も年々減っていき肩身が狭い…それなのに、禁煙できないのはなぜでしょう?現在では、やめられない喫煙の実態はニコチン依存症であることがわかっています。喫煙の習慣やニコチン依存症について考えてみませんか。きっと、気軽に禁煙にチャレンジしたくなるはずです。
ニコチン依存症とは
いつでもやめられると思って吸い始めたのに、いつの間にかタバコと離れられなくなってしまうのはなぜでしょう。禁煙に挑戦しても、つい吸ってしまうのはなぜでしょう。これは、タバコの煙に含まれるニコチンが、麻薬にも劣らない強い依存性をもつからです。
そのため、現在では、喫煙する習慣の本質は「ニコチン依存症」という、治療が必要な病気であるとされています。では、タバコをすうという行為が、どのようにして「ニコチン依存症」に至るのでしょうか。
タバコを吸うと、ニコチンが数秒で脳に達し、快感を生じさせる物質(ドパミン)を放出させます。ドパミンが放出されると、喫煙者は快感を味わいます。同時に、またもう一度タバコを吸いたいという欲求が生じます。その結果、次の1本を吸って再び快感を得ても、さらに次の1本が欲しくなるという悪循環に陥ります。この状態がニコチン依存症(=喫煙の習慣)です。
風邪を意志の力で治せないのと同じように、病気であるニコチン依存症を意志の力だけで治すことは難しいのです。最近では、禁煙治療が健康保険等で受けられるようになるなど、ニコチン依存症を治すための環境が整いつつあります。禁煙しようと思ったら、まずはお気軽にご相談ください。
禁煙の薬「飲む」「貼る」「かむ」
現在、禁煙のための薬は、「飲む」タイプ、「貼る」タイプ、「かむ」タイプの3種類があります。それぞれの特徴を知って、薬選びの参考にしてください。(2011年11月現在)禁煙に興味がある方、気軽に禁煙治療を受けてみませんか?
日本禁煙学会 禁煙認定指導医の元でたばこを止める治療を受けませんか?
喫煙防止の出前授業いたします。無料です。
喫煙防止の授業(小学校)
喫煙防止授業(ニコチン濃度説明)
喫煙防止授業(中学校)
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
睡眠時無呼吸症候群は、一晩の睡眠中に30回以上無呼吸(10秒以上の鼻と口での気流停止)または1時間あたり5回以上の無呼吸を認めるものと定義されています。日本ではその有病率が男性で3.28%、女性で0.5%、全体では約2%(200万人)とも言われています。
循環器系、自律神経系、内分泌系、造血機能系に影響を及ぼし突然死の原因、交通事故の誘因として注目されつつある病態です。平成15年2月に岡山駅で新幹線が自動制御装置により緊急停止し、居眠りをしていた運転士が重度の睡眠時無呼吸症候群と診断されました。マスメディアによる報道も増え、国民の関心も高まりつつあります。
症状と合併症
習慣性のいびき、日中ひどく眠い、睡眠中に息ができなくなって起きた、睡眠時間は十分なのに朝起きたときにスッキリしない、頭が痛い等の症状があればご相談ください。
また、合併症の発症率は高血圧が2倍、冠動脈疾患が3倍、脳血管障害が4倍、交通事故発生率が7倍と言われています。
診察と検査の流れ
1.まずは診察・検査
耳鼻咽喉科医師の診察と鼻咽腔内視鏡検査、簡易睡眠検査などの検査をします。
その結果により、精密な夜間ポリグラフ検査(PSG)が必要な方は一泊二日の検査入院が出来る病院を紹介いたします。
当院からは陶病院の睡眠呼吸障害センターへ紹介させていただくことが多いです。
2.治療方針の決定
中等度以上の場合は経鼻的持続陽圧呼吸療法(ネイザルシーパップ・nasal-CPAP)を開始します。
口蓋扁桃(いわゆる扁桃腺)やアデノイドが大きい場合・鼻腔がせまい場合は手術を考慮する事もあります。
肥満がある場合は体重の減量もおすすめします。
口腔内装具が必要な場合は、歯科の先生をご紹介いたします。
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎の治療法
1.内服薬や点鼻薬
薬は使用している間だけ効く対症療法です。眠くならない薬もあります。値段も含めてその方に合う処方を一緒に探します。
2.手術療法
15歳以上であれば、入院して鼻水のスイッチのような神経を切断する手術もあります。これは鼻閉・はなみず共に改善できる手術です。近隣の手術のできる病院へ紹介します。
3.舌下免疫療法(減感作療法)
アレルギーの原因物質を薄い濃度から少しずつ内服していきます。唯一の本当の体質改善が得られる治療です。3~5年間は継続する必要があります。
7~8割の人に有効といわれていて100%ではないのですが、症状の強い方にはお勧めです。
当院ではすぎ花粉とダニのアレルギーの方のみ行っています。
急性中耳炎
急性中耳炎について
風邪をひいている時に耳が痛くなったら、急性中耳炎かもしれません。耳痛、発熱、耳漏が主な症状ですが、乳幼児に多い病気ですから、必ずこのような症状があるとも限りません。ねばねばして色が濃い鼻水が多いので耳鼻科を受診したら、急性中耳炎だったというようなこともしばしばです。
診断は症状と鼓膜を見ることで行います。(図1)は正常な鼓膜です。(図2)は急性中耳炎の鼓膜です。鼓膜の赤みや腫れ、耳漏などを見て重症度がわかります。鼓膜の奥が中耳という部屋です。そこは耳管という管で鼻の奥とつながっています。その耳管を通じて鼻の方から中耳に原因の菌やウイルスが波及して中耳に感染がおきます。
乳幼児の急性中耳炎が治りにくい、治っても反復するということがよく問題になっているのですが、治りにくい2大リスク要因は、「2歳未満児」と「保育園に通っていること」です。お母さんからもらった免疫が生後6か月位でなくなってしまい、2歳くらいまでは免疫力の弱い時代です。また保育園児は家庭保育の子どもに比べて抗生物質の効きにくい薬剤耐性菌を保有していることが多いのです。その他「母乳保育でないこと」、「おしゃぶりの使用」、「家族の喫煙」も中耳炎を治りにくくする要因となります。簡単に変えられないこともありますが、おしゃぶりの使用や家族の喫煙は是非子どもさんの中耳炎を治すためにも考え直して欲しいものです。
治療は中耳炎が軽症であれば鼻の治療などだけで3日ほど様子をみます。必ず抗生物質が必要とは限りません。RSウイルス感染症や手足口病、突発性発疹などのウイルス感染に伴う中耳炎であれば、これらのウイルスを抑える薬はないので対症療法で経過をみます。インフルエンザに伴うものであれば、インフルエンザの治療をします。経過観察で軽快しない場合や、細菌感染が疑われる場合は、原因菌に効果のある抗生物質の内服が必要です。中耳炎が中等症以上である場合は、通常量より多めの抗生物質の投与や鼓膜切開を行って、中耳の膿汁の出口を作ることも推奨されています。できるだけ医師の選択した薬を日に3回なら3回に近い形できちんと内服することをお勧めします。ルーズな薬の内服では、効果も不十分となりがちです。熱が下がった、元気になったと症状に改善傾向があっても、中耳炎の治療を終了してよいとは限らないので、耳鼻科医がよいというまでは治療を継続されることをお勧めします。
中耳炎の反復が多い場合には、十全大補湯という漢方薬を用いたり、鼓膜切開の穴が閉じないようにする鼓膜換気チューブ留置(図3)を行ったりすることもあります。
将来の聞こえに問題を残さないためにも耳鼻咽喉科で相談してみてください。
(図1)
(図2)
(図3)
滲出性中耳炎
滲出性中耳炎について
滲出性中耳炎とは鼓膜の内側の中耳に液体が貯まって聞こえが悪くなる病気です。大人には割合少なく、3~8歳の子どもによくみられます。大人では耳閉感、難聴、耳鳴を訴えることがありますが、子どもは何も症状を訴えないことも多く、痛みや熱もないので、なかなか気付かれず放置されやすいです。自然に治ることもありますが、難聴に気付かないままそれが長期間放置されてしまうと、言語発達に影響することがあります。また、滲出性中耳炎が長引いて重症化すると、癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎を発症し、入院しての手術が必要になることもあります。
原因は副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などの炎症や、鼻と耳をつなぐ耳管というトンネルの働きが悪いことだと言われています。
診断はまず耳鼻咽喉科で鼓膜を観察することです。聴力検査や鼓膜の動きを測定することもあります。図1では鼓膜を通して中耳の下の方に液体が貯まっているのがわかります。図2では鼓膜が奥にへこんでおり、その中に黄色い液体が透けて見えています。
治療は①耳管の通りを悪くしている原因を取り除く治療を行います。子どもの滲出性中耳炎の多くは副鼻腔炎を合併しており、まず薬などで副鼻腔炎の治療を行います。②鼻側から耳管を通して空気を入れる治療もあります。自己通気用の風船を用いた治療や、耳鼻咽喉科の外来で行うカテーテル通気があります。③鼓膜に小さな穴を開けて貯まっている液体が抜けるようにする鼓膜切開術や鼓膜チューブ留置術があります。
滲出性中耳炎は経過を観察しているだけで改善していくのか、あるいは数か月間改善が見られない場合には難聴など現在の生活に問題が出ていないかを見極めながら、言語発達など将来に問題を残さないように時に応じて必要な治療を行うことが大切です。鼓膜チューブ留置術は長期間難聴が改善されうる有効な治療法ですが、鼓膜に穴が残るなどの後遺症もありうるため慎重に判断する必要があります。図3が鼓膜チューブ留置術を行った鼓膜です。チューブは数カ月から数年間入れておきますが、その期間は違和感や痛みはなく、プールを含めて普段通りに生活できることが多いです。
(図1)
(図2)
(図3)
補聴器
補聴器について
40歳を過ぎると高い音から少しずつ聴力の低下が始まります。お薬をのんだりしても老化現象を防ぐことはできず、会話の声の音が大体40dB位の難聴になってきたら、補聴器を考えたほうがよいです。脳は音によって刺激を受けて活動します。補聴器を軽度難聴の方が付けることで認知症が7年程度遅く始まることもわかってきています。高血圧の方が血圧の薬をのんだり、たばこを吸う方が禁煙したりするのと同様に、補聴器を装用することが認知症予防の大切な項目としてあげられています。日本ではヨーロッパなどと比べて補聴器の普及が大変遅れていると言われています。ではどうやって補聴器を使っていくことができるでしょう?
まず、大切な心構えとして一つは補聴器のできないことを求めないことです。補聴器は「今より楽に聞こえる」ことが目標であって、「聞こえを元通りにする」道具ではありません。80%聞き取れればいい、くらいの妥協は必要です。また、「大勢の声の中から特定の声を聞き分ける」のは補聴器では期待できません。基本的には静かな場面で対面での会話を楽に聞き取れるようにする、というものです。「歩くための杖」のように聞こえを補助してくれる道具です。
もう一つは補聴器が聞こえるようにしてくれるのではなく、聞こえのリハビリを手伝ってくれる道具です。補聴器で加工された音に自分の脳を慣れさせる必要があります。補聴器が音を大きくしてくれても、それが何の音か識別するのは脳であり、脳に音を伝える聞こえの神経も若い時と同じ性能ではないのです。難聴の方は大きい声で話されることが多いですが、補聴器をつけたら自分の声がうるさく感じるので、2割くらいは小さな声で話すようにしてください。
メガネのようにすぐに効果はあらわれません。半年くらいでやっと効果を実感できるくらいです。装用時間が長いほど慣れは早いです。慣れてきたらだんだん入浴時と寝るとき以外は常につけていることをお勧めします。補聴器は買ってすぐに便利に使えるものではなく、その人の聞こえに合わせて数回は調整する必要があります。使ってみてどんな不満があるのかを、具体的に伝えていただくことで、よりよい調整が可能となります。また、耳垢が耳栓に詰まってしまったり、さびて故障することもあります。定期的な補聴器の検査も必要です。
生涯にわたり、周りの人と話ができるために補聴器装用についても医院全体でお手伝いしたいと考えています。